アーティストインタビュー

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杉本 澄男 先生

杉本 澄男 先生

自分なりの自分らしい手法を見つけることを求め続ける。

西洋とは気候や食生活、風土など、様々な文化の違いがある中で、油絵具をどれだけ使いこなせているのかは正直分からないし、とにかく自分なりの描き方を求め続けて作品を創り上げていきたいですね


●まずはじめに、先生が画家を目指したきっかけをお聞かせ下さい。

杉本:子供の頃から画を描くのが好きで家族や学校で褒められるのが嬉しかったです。中学生の時、親にねだって買ってもらった油絵具を手にし、イーゼルを抱えて、近くの山、川、港の風景を自己流に描いてる時が唯一、自分の世界に浸れました。将来、画を描いたり、物作りに携われたら良いなと思っていました。

 

●先生の作品のモチーフの中心には人物を描くことが昔から一貫して見受けられますが、やはり女性像の魅力に引き寄せられます。女性を描くことのこだわりとは何でしょうか.

杉本:絵の世界に限らず、昔から小説や映画にも魅力的な女性を描いた作品は数多いですし、物語の中でも女性がきちんと描かれていないものは面白くないでしょう。ただ最近は、人物や風景、動物、静物など、描く対象物の幅は昔より広がっています。ですが、何を描くにせよ、そこに気持ちが入っていないとその対象物は輝きを持たないし、自分なりの美意識のようなものを常に見つけながら創作に取り組んでいます。

奥様:昔は岩手山を描くなんて想像つきませんでしたね。でも結構自然を見つめることはもともと好きで、季節の移り変わりや風の匂いなどにも敏感なところがありますよ。

 

●少しずつ、技法そのものも工夫を凝らした変化が生じていると思いますが、油彩としては独特のマチエール(絵肌)ですね。

杉本:ヨーロッパで描かれてきた油絵の持つマチエールは日本の作家には、なかなか難しいでしょう。西洋とは気候や食生活、風土など、様々な文化の違いがある中で、油絵具をどれだけ使いこなせているのかは正直分からないし、とにかく自分なりの描き方を求め続けて作品を創り上げています。

 

●それは日本的な表現へのこだわりでもあるのですか?

杉本:たとえば人物のきれいな地肌を表現したいという思いから白い絵具の重ね塗りを行う過程で藤田嗣治がかつて用いたタルクをふりかけることで肌の滑らかさを追求したり、下塗りを施した生乾きのキャンバス上にピンと布を貼り付けては剥がすという工程を取り入れて、布目を背景の文様に活かす効果を生み出します。もし日本的と言われるとすれば、例えば漆工芸の技法のように僕も何色かの絵具の層を重ねては、布で拭い取ったり綿棒で擦り取るといった腱鞘炎になりそうな作業を行い、更に絵具を重ねるという工程を繰り返しますので、近いものがあるかもしれません。先ほど、絵具にまみれたおびただしい数のボロきれやガーゼの山があったのもそうです。以前より濁りを更に拭き取るよう意識していますので、初期の作品よりもつるつるしてますよ。

 

●それが絵肌のつややかさにつながるのですね。線の魅力もじっくり見ていただきたいです。削っていらしゃいますよね?

杉本:はい。彫刻刀で削って線の溝にまた絵具をすりこみます。線は重ねて削る部分が二重にぶれないよう気を遣いますね。

 

●体力勝負ですね。適度な運動やリフレッシュにはどうされているのですか?
杉本:近所の高松の池の畔まで散歩によく行きます。リラックスできる大切な場所であると同時に、動物や、鳥たち-きじ、きつつき、白鳥、鴨、めじろなどや、自然の様々な色彩に触れることはとてもいい勉強になっています。

奥様:昨日は青い鳥の夢を見たとか言ってましたから、いいことが起きるんじゃないかしら(笑)

(そこに絵のモデルにも登場する愛猫「アメ太郎」くんが寄ってきました)

 

●千葉県松山庭園美術館で毎年開催される「猫ねこ展覧会」の大賞、松山庭園美術館賞を昨年は受賞されています。猫も今やかかせない対象ですね。

杉本:愛嬌があって、少しいい加減なずる賢さがあるのがいいんですよね。

 

●猫とわんぱくな子供たちが描かれた作品もまた杉本作品の特徴で夢にあふれていますが、何かメッセージがこめられているのでしょうか?

杉本:僕の場合、言葉で説明できないからこそ絵の世界で表現しようとする要素が作品にこめられているような気がします。子供の頃に野山を駆け回っていた記憶の情景なども絵のための大切なイマジネーションですし、現代ではすっかりいなくなってしまった「わんぱく小僧」たちが嬉々としてはしゃいでいる光景を絵の中に蘇らせているのかもしれません。

 

●まるで楽園のような作品もありますね。今年は画業40年になる年とのことですが、最後に今後の展望をお聞かせくださいますか。

杉本:あと20年は描き続けていたいので、感性を枯らさないよう、その為にも気力を保ち続けられるような健康な体力を維持出来ればいいですね。何より、今まで自分の絵を飾っていただいている人達を裏切らないような制作を続けていきたいと思います。

 

●本日は制作の合間に、奥様にもご協力いただきましてありがとうございました。

 

ギャラリー通信#59(2013年6月) インタビュー記事より