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心の拠り所となる芸術の大切さ

林 純一 さん

林 純一 さん

8芸術は世の中にとても大切で必要なものだと思っています。・・・心の溝を埋め、人を勇気付けていくものとして必要なものじゃないでしょうか。それは、文学、音楽、宗教にも共通していますが、魂が再生されていくために無くてはならないものだと思います。(林様談)

本日は孫家珮先生の油絵作品をお飾りいただいている林純一様の、日本橋にあるオフィスをお邪魔してお話を伺いました。( 取材  顧 定珍、酒井 純男)


 

■ 林様とのご縁は、このオフィスにもお飾りいただいている孫家珮先生の作品がきっかけで、以来8年目になりますが、孫先生との出会いはそれ以前からとお聞きしました。

林:1995年まで遡りますが、実は最初に購入させていただいたのは風景画ではなくお花のモチーフだったんです。

■ 意外な気もしますが、モチーフが何であれ、好きな作家の惹かれる作品に共通するものとは何でしょう?例えば孫家珮先生の場合など。

林:描かれる絵の対象や手法に関係なく、作家が作品に注ぐ視線には東洋の目、西洋の目というものが存在していると思います。孫先生が西洋画の手法で描く油絵にも、技術的なものだけでなく、東洋の目で捉えた息吹が宿っている。モネが睡蓮の咲く日本庭園を描いても、その目は西洋のものですよね。つまり、東洋人だけが醸し出せる空気感と、更には和でも洋でもないオリジナリティでしょうか。

■ 奥様とも陶器を見て歩かれるなど、美術品にはもともとご興味がおありだったようですが、美術がもたらす役割があるとすればどのようにお考えですか?

 

林様ご夫妻

 

林:芸術は世の中にとても大切で必要なものだと思っています。なぜなら、ひたむきに努力しても、全ての人が報われる訳ではなく、必ず心が満たされ幸せになるとは限らない。そうした人達を応援していくもの、心の拠り所となるものとして芸術は大きな役割を担うものだと思います。心の溝を埋め、人を勇気づけていくものとして必要なものじゃないでしょうか。それは、文学、音楽、宗教にも共通していますが、魂が再生されていくために無くてはならないものだと思います。

■ そこには東洋と西洋のギャップもまた存在すると。

林:食生活を例に挙げると、食事が西洋化してきたことで昨今日本人で大腸ガンを患う人が増えたと言われています。日本古来の食文化に適応した日本人の体質と西洋風の食文化とがミスマッチを起こしているのではと思います。それは魂の世界でも同じではないでしょうか。和魂洋才が叫ばれた明治から現在に至る過程で、和魂を徐々に侵食してきた洋魂の部分が消化不良を起こしている様に思えるんです。そこに生じている「ズレ」のようなものを埋めていくことが心の分野で必要になってきているという気がします。

■ 体の構造の部分と魂の構造の部分がそれぞれ培ってきたものは、意外と気づきにくいのかもしれません。

林:孫先生のようなアーティストにはそうした東洋と西洋がなかなか互いに埋めきれないでいるギャップを埋めていくような仕事を続けて欲しい。西洋人にとって西洋の近代合理主義が本当に幸せかどうか、そこに東洋の思想を取り入れた時に違ったチャンスがまた生まれるのではというように、双方がより豊かな未来へ向けて学びあうことが出来るかも知れませんね。

■ 近年は中国にもかつての日本以上のスピードで洋の文化やテクノロジーが入り込んでいますが、西洋諸国が東洋思想へ寄せる関心から生まれるものにも興味が湧きます。孫家珮先生に林様が期待される仕事にも言えますが、アートの分野はその一端を担っているわけですね。

林:夢の様な話かもしれませんが、世界平和の実現と同じです。困難で険しい道程ですが、困難で険しいからという理由でそのための努力を怠っていいということにならないのと同じです。

■ 最後におかげ様で10周年を迎えたシルクランド画廊にメッセージを一言お願いします。

林:銀座には多くの画廊がありますが、他で見られない企画、個性ある企画をこれからも期待しています。和のテーマは東洋の一部でしかありません。和以外の東洋、中国出身作家などの個性をこれからも掘り起こして、日本文化や西洋の文化と渡り合う中で生まれるもの消滅したものを見つめていきながら、常に心に響くアートを提供し続けてください。

■ 本日は大変お忙しい中、お時間を割いていただき本当にありがとうございました。

 

ギャラリー通信#57(2013年3月) インタビュー記事より