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「祈り」にも近い感覚の水郷風景

野田 和秀 さん

野田 和秀 さん

野田様ご夫妻 (静岡県三島市のご自宅にて)

孫先生とお話してると、「何かのため」にではない、つまり野心とかと対極にある非常に純粋な姿勢が一貫して感じられました。それは一種『祈り』にも近い感覚であの水郷風景を描き続けているような印象すら受ける思いでした。(野田様談)

2004年以来、孫家珮先生のファンとしてシルクランド画廊を応援してくださっている野田和秀様ご夫妻を、三島市で経営されている会社(株式会社ユニオン・マエダ)とご自宅で取材させていただきました( 聞き手  顧 定珍)


 

顧:もう7年前になりますが初めて画廊へお越しいただいた時のことをお聞かせください。

野田:友人夫妻と日動画廊を見たあとで、偶然入ったところに孫先生の絵が目に留まったのが初めての出会いだったと思います。
もともと東山魁夷の風景画が欲しいと思っていましたが、日本画と油絵の違いはあっても孫先生の作品には何か日本の原風景にも通づる共通したやさしさや懐かしさを感じました。

先月、初めて尾瀬ヶ原に行ってきました。その時、朝靄のかかった両側の山並みが、昔観た東山画伯の絵を彷彿とさせるそれは素晴らしい景色でした。 画伯がここでスケッチされたのかと思うほどにですね。共通した風景への想いですかね。

顧:会社にもたくさんの絵が飾ってありますが、作品を求める時は何が決め手になるのでしょうか。

野田:絵を選ぶ基準に一貫性は特にないと思います。ご覧のように、和む絵、元気が出そうな絵、有名無名は問わず様々ですが…

奥様:ずっと見続けていられるような、自分達にとって飽きのこない作品を選ぶよう意識はしていますが、その時のインスピレーションが決め手じゃないでしょうか。

野田:私はクラシック音楽が好きで、若い頃から特にバッハを好んで聴いていますが、決して派手でなくとも飽きないで長く親しむことが出来るいいものは、絵画でも音楽でも共通していますよね。

顧:中でも孫先生の作品は会社とご自宅の双方で楽しまれていますが、どのような良さを感じていらっしゃいますか?

野田:以前ヨーロッパの美術館巡りをした時に、近代絵画の特徴のひとつとして、印象派以降の作品には特に色彩の豊かさを強く感じたんです。
対して孫先生の作品には、少し時代を遡ったような写実性があって、そこに独特の癒しや幸福感にひたれるような良さを感じています。

顧:私は孫先生と出会ってから、もう18~9年が経つんですが、本当に変わらない魅力を今もお持ちです。野田様も先生ご本人とは何度かお会いになっていますが、どのような印象を持たれましたか?

野田:好きになる絵には、いつも絵そのもの以上に背後にある作家の想いと共感していることに気付かされます。孫先生は以前「見る人がいて初めて作品に命が宿る」と仰っていましたが、実にいい言葉ですよね。単なるインテリアの一部としてとらえる感覚と、いつまでも見飽きない絵との違いはそこにあると思うんです。

孫先生とお話してると、「何かのため」にではない、つまり野心とかと対極にある非常に純粋な姿勢が一貫して感じられました。それは一種『祈り』にも近い感覚であの水郷風景を描き続けているような印象すら受ける思いでした。

顧:江南水郷に行かれましたら、その『祈り』にも似た感覚は更に実感されるかもしれませんね。

野田:昨年話題になった展覧会の、あるフランス作家などは上昇志向の塊りのようなほとばしるエネルギーと、自己顕示の強い性格そのものを作品にも感じました。だけどそういう作品が果たして見る側の人々に幸せをもたらし得ているのだろうかという気持ちもあるんですね。

孫先生の作品はまさにその対極です。普段会社勤めしている人間がチームワークの中で目的に進むという作業を繰り返すのとはかけ離れた、圧倒的な孤独の中で制作に没頭されていると思うんですが、それを感じさせず、むしろ泰然として何かを強く主張し過ぎることもない。つまり絵だけを見て評価してもらえばいいという潔さを感じます。そういう人物と巡り会えたことは、自分にとってとても得がたいことです。

顧:10月には上海美術館での個展を開催される孫 家珮先生に、メッセージをお願いします。

野田:ロータリークラブが掲げる標語に「最も良く奉仕する者、最も多く報いられる」という言葉がありますが、この中で一体何に対して奉仕するのかということを考えてみると、それは「自分に関わる人々の幸せ」に対してだとある時期から思うようになったんです。孫先生の作品は、見る人たちの心の平穏、ハピネスそのものですから、これからもまっすぐに今まで通り制作に励んでいただきたいという気持ちです。
それが自ずと、砂漠のオアシスというか、希望を与え続けてくれるものに繋がって行くと信じています。

顧:孫先生も喜ばれると思います。本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただきまして、本当にありがとうございました

 

ギャラリー通信#39(2011年8月) インタビュー記事より

 

会社にて  作品は、孫 家珮「麻の刻」F4、「セーヌ川の朝」P10

 

株式会社ユニオン・マエダ http://www.union-md.co.jp/