GMご挨拶

GM Message

開廊八周年に寄せて

開廊八周年に寄せて

この二月、シルクランド画廊は、お陰さまで、開廊八周年を迎えました。

作品と、精魂こめて制作する先生方、そして愛情をもって作品を迎えてくださるお客様方が、
たしかな絆で結ばれてきた証だと思うと、感謝と幸せな気持ちでいっぱいです。

昨年末、私が画商として生きることを決定づけた一枚の絵、尤 勁東(ユウ ジンドン)先生のある作品と再会しました。
1993年の春、まだ留学生だった私が、銀座にある画廊で出会った『雨露』です。

著名な尤先生がいらっしゃることも知らずに会場で作品を見ていると、
そこに聞こえてきたのは『雨露』の購入を検討中のお客様と画廊スタッフの会話。
画面の隅に小さな花が一輪あるのが気にいらない、というような内容でした。
偶然隣にいた私はだんだん胸が熱くなり、つい口をはさんでしまいました。
「この小さな花が、弱くても懸命に生きているこの女性そのものだと思われませんか」

当時の私は、日本で画商になることを決心したばかり。
怖いもの知らずで不安はなかったけれど、たった一度展覧会を手がけただけで、
何をすればいいのかまったくわからない状態でした。
目立たないけれど懸命になっている自分を、作品中の花に重ね合わせていたのです。

この一言で、お客様は納得されて購入、尤先生からは握手を求められました。
自分の言葉で購入を決断されたことの嬉しさ、そして「お客様と絵の感動を共有できたときにはじめて作品をお求めいただける」
「作家の想いを伝えることが画商の務め」という私の「絵を売る」原点としても忘れられない経験です。
のちに、信頼してくださった尤先生から作品取扱いの承諾もいただき、私が画商として大きな一歩を踏み出せたのです。

十八年振りにその時のお客様と偶然再会、『雨露』の前に、当時の感動を熱く語りました。
そのお客様は著名なデザイナー。
今思えば、プロフェッショナルに向かって意見したのですから、我ながらびっくりです。

絵との幸せな出会い、そして絵を愛する心が、末広がりの八周年に、世の隅々にまで広がりますように
――「かけがえのない絵」との出会いに乾杯!

 

2011年2月
                        シルクランド画廊  顧 定珍