■ 前回の個展でも描かれていた奈良、大和路へ寄せる思いは特別なものがあるのでしょうか。また、土塀の質感から連想される絵肌(マチエール)作りを活かしてこれからも制作していかれるのでしょうね。
小口 「やまとは 国のまほろば たたなづく 青垣 山ごもれる やまとし うるわし」と言う詩がありますが、土臭い素朴なたたずまいの土塀が好きで学生の頃よく行きました。故郷が長野県の山奥なのもありまして、土壁には特別の思いがあります。これからも厚塗りの重みのある絵が描いていけたらと思っております。 奈良も奈良博できれいにしすぎた街並みも、やっと少し落ち着きを取り戻しこれからもっとよくなっていくと思います。
■ 日常の中にある身近なちょっとしたもの、たとえば植物、生きもの、花器などのモチーフは先生にとってどのように大切な意味を持っているのでしょうか。
小口 花は家内が育ててくれています。四季折々に咲く花に教えられ、その花に合う花器を探し、ちょうど良い地塗りをしてあるキャンバスに描き、なじませていくという仕事です。

■ 作品にも描かれている備前焼の花生などの花器の収集も見事です。
小口 備前独特の鉄分を含んだ陶土を使い、釉薬を使わない焼き締めのざらっとした素朴な感じが最大の魅力です。それが使いこまれて角が取れ丸みを帯び、光沢を増し更に素朴な色気を感じさせます。
■ やはり小口先生の作品の根底には、ありのまま、素朴というキーワードがかかせないという印象が拭えなくなってきましたが、何もかもが合理的で、土の感触すら忘れてしまいそうな今の世の中において、多くの方にご覧いただきたい作品です。
作家としてのキャリアが、年齢的にも充実する時期にあると思いますが、これからの展望、作家としての楽しみ方を伺えますか?
小口 作家としての楽しみは、個展の会場で、額で飾られた自分の絵を楽しんで頂いているときです。これからも素朴で、心温まる作品を多く描いていきたいですね。
昨年より師匠でもある二宮の二見記念館(二見利節美術館)の企画委員もやっておりかなり忙しい日々を送っています。
■ 個展とても楽しみにしています。本日は本当にありがとうございました。

備前焼などのコレクション(左) 奥様と庭にて(右)
2013年3月 ギャラリー通信58 インタビューより
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